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2話
寝坊するんだ、と呟きながらむつは颯介の顔をまじまじと見ていた。本当に寝坊だったのか、顔色は悪そうでもないし、珍しく髪の毛が、ぴんぴんと跳ねている。
「珍しい…」
「ですね」
祐斗もまじまじと颯介の顔を見ていた。2人から、そんな風に見られる事に慣れていない颯介は、困ったような笑みを浮かべた。その顔には、昨日のような気落ちした感じはない。
「あ…ここ、どうしたの?」
そろっと手を伸ばしたむつが、ちょんっと鼻先をつつくと颯介は、ばつが悪そうな顔をした。
「…目立つかい?」
「ちょっと…歯形?」
「あぁ…2度寝しちゃって…管狐が噛んで起こしてくれたんだよ。やだなぁ…しばらくは残りそうだ」
鼻先を颯介が撫でていると、名前を呼ばれた管狐が、襟元から顔をだした。
「あら、管狐。最近、あんまり顔見せてくれなかったわね…元気だった?颯介さんを起こしたんだってね?えらーい」
手を伸ばしたむつが、管狐の小さな額を指先で撫でてやると、するっと出てきてむつの肩に上った。




