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11話
「よしよし…ねぇ、らせつちゃん。何で祐斗と一緒に雪に埋まってたのかしら?」
「………」
聞かれたくない事だったのか、らせつは唇を尖らせている。だが、黙ってもいずらいのか、落ち着きなくきょろきょろと辺りを見回している。
「何があったのか教えてくれる?」
「…ちちにもおねぇさんにも言わない?」
「言わないよ。っていうよりも、会えない気がするから…言えないわよ」
「それなら…むつにだけ…」
「待て待て、雪に埋もれたお前らを掘り起こしたのは、俺と湯野ちゃんもだぞ?むつにだけってのは…」
むつが1番頑張ったかもしれないが、最終的に掘り出して、ここまで運んだ山上は、理由はちゃんと聞きたいようだ。むつもそれに対しては、同感でもあった。
「らせつちゃん、誰にも言わないって約束するから。この悪いやつとそこのお兄さんにも話してあげて欲しいな。いい?」
「…むつがそう言うなら」
しょうがない、とらせつが言うと納得できないとでも言いたげに、山上は舌打ちを鳴らして、コートのポケットから出したタバコをくわえていた。