664/1090
11話
「そうか。さすがに雪女は連れて行けねぇな…溶けちまったら困るしな」
こくりと頷きながら、むつは山上を見上げた。ぼうっとする頭ではあったが、山上の言い様からして、雪女が雪だるまから生まれた者だと、知っていそうな気がした。
「…どうしましょうか?この雪女だけ、俺が山に戻しに行きましょうか?」
「待って。何で祐斗がらせつちゃんを庇うようにして埋もれてたのか聞きたい」
気だるそうなむつは、後部座席を見た。そこには、祐斗がしっかりとらせつを抱き締めて、横になっている。
「…掘り起こしたけど、祐斗また凍結しない?らせつちゃん抱っこしてて大丈夫なのかなぁ?」
「…大丈夫じゃねぇな」
よっこらせ、と言いながら山上は身を乗り出して祐斗の腕をほどくと、らせつを離して抱き上げた。山上でもずっとらせつを抱っこしていれば、身体が冷えきってしまうだろう。のっそりと立ち上がったむつは、山上の腕の中のらせつの頬を撫でた。