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11話
ひょいっと抱き上げられたむつは、驚いて悲鳴をあげた。すると先を歩いていた山上が振り返って、くすくすと笑っていた。
「むっちゃんくらいなら抱っこ出来るよ。あんまり…増量されると、まぁ…分かんないけどね」
「う、うるさいぃっ‼」
「ごめん、ごめん。行こうか。むっちゃんも暖かい所で休まないといけないから」
颯介に抱き上げられ、むつはその顔を下からじっと見ていた。ほのかな明かりの中で浮かび上がる顔は、見慣れた颯介の物だが、何となく違うような気がした。力も体力もずば抜けてあるのは分かっていたが、こんな風にされた事はなかった。がっしりとした腕も意外と厚みのある胸も安心感があり、むつはそこにもたれると、目を閉じてほぅっと息をついた。