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10話
「よし…後少しだな。こっちはいいから、むつを頼んだ」
「むっちゃんは大丈夫かい?」
急にぱっと明るくなり、むつは眩しさに目を細めた。いくら、颯介と山上でも真っ暗な中で、見えているはずはなかったのだ。手にしているのは、懐中電灯か何かだろうか。強い光だった。
「あ、ごめん…眩しかったかい?」
「ん…大丈夫」
ごしごしと目を擦って、むつは光が射している方を見た。そして、のそのそと立ち上がると、手を伸ばした。
「どうしたんだい?」
「…颯介さん?」
「そうだよ。何か他の物に見えるかい?」
「急に現れたから…」
伸ばされた手は、どうしたらいいのかと宙をさ迷っている。そんの手を取った颯介は、ぎゅっと握った。