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10話
小さく細いというのに、わりと力がある。むつは引っ張られるがままに、しゃがみこんだ。
「…もしかして、雪の下って事?」
言葉を肯定するかのように、管狐はそろっとむつの頬を撫でた。これだけ真っ暗だというのに、管狐にはむつの姿が見えているという事だろうか。自分が人ではないんじゃないかと思っていたが、やはり暗いと何も見えない。こんなんで、人じゃないかもとよく言えたもんだとむつは、どこか呆れた心地になっていた。
「まぁ…もう何でもいいや。で、祐斗は埋まってるの?掘れって事ね?世話が焼ける‼」
よく出来たとでも言うかのように、管狐は再びむつの頬をそろっと尻尾で撫でた。本当に埋まっているのだとしたら、早くしなくては祐斗の氷漬けが出来上がってしまう。それよりも先に、窒息死だ。むつは膝をついて、両手でざっくざっくと雪を掘り始めた。