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10話
「らせつちゃーん!!祐斗ーっ‼」
管狐は近くに居るが、祐斗とらせつは姿を見せない。せめて、声だけでも聞こえたら、方向が分かりそうなものだ。
「祐斗ーっ‼このバカぁっ‼1人で行動するなんて許さないんだからーっ‼」
むつは大きな声で、何度も呼んだ。らせつからの返事がないのは当たり前だとしても、祐斗からの返事もいまだにない。
「どうしよ…管狐、祐斗の場所分かる?」
管狐の主ではないむつだが、他に頼れる相手は居ない。管狐は、するっとむつから離れたと思ったら、横から顔をじっと覗きこんできた。
「お願いよ…分かってる。管狐が従うのは主の…凪君の命令だって。でも、あたしからはお願いなの。無茶を承知で…祐斗の居場所が分かるなら教えて、お願い」
むつが本当に困っていると分かったのか、管狐も困ったように首を傾げた。そして、むつの頬に短い前足をかけると、こつんっと額に額を押し付けてた。