651/1090
10話
「管狐ね…」
肩にやってきた気配の主、管狐はすりっとむつの頬に身体を押し付けた。怖がっている様子はなく、甘えているようだった。
「危うく切る所だった…ごめんね」
ふわふわと毛を撫でてやり、むつが謝ると管狐はよりいっそう、身体を押し付けてきた。本当に剣先を引いてよかった。もしそのまま動かしていれば、凪の管狐を真っ二つにしてしまう所だったのだから。
「管狐は無事なのに…祐斗は?」
問い掛けても、当然の事ながら管狐は答えない。その代わりに、ぐりぐりと身体を押し付けてくる。凪の管狐が、こんなに積極的にやってくるのを不思議に思ったが、それ以上は何も思わなかった。ただ、返事のない祐斗が気になっていた。