648/1090
10話
「ら、らせつちゃん落ち着いて聞いて…っ‼」
怒っているらせつを落ち着かせようと、話をしようとしたが、それより先にぶわっと雪が舞い上がりむつの声は最後まで届かなかった。らせつと名前がついているだけあって、気性は激しいのかもしれない。子供だからといって、甘く見ていたむつは咄嗟に手を伸ばして日本刀を掴んだ。
「祐斗‼どこっ‼」
舞い上がっている雪のせいで、視界はゼロに等しい。ましてや、すでにとっぷりと日が暮れている。真っ暗でもある。手にしていたはずのペンライトは、驚いた時に取り落としてしまったようで、光らしい物は何もない。自分の軽率な発言を後悔しても遅い。
「祐斗‼」
視界は悪くとも声が聞こえないはずはない。叫んでいるというのに、祐斗からの返事はない。雪は舞い上がったが、吹き飛ばされるような衝撃はなかったはずだ。それなのに返事がないとなると、何かが起きたに違いない。むつはぎりっと唇を咬んだ。