645/1090
10話
「なんっにも知らないの?むつは、うちが雪女なのすぐに分かったくせに‼」
「あ…うん…ごめんね。何にも知らないの」
ややしょんぼりしたようにむつが謝ると、らせつは仕方なさそうに溜め息を漏らした。小さいくせに、大人のような仕草を見せるらせつを見て、小さくても女の子なんだ、とむつはどこか感心していた。
「あのね、らせつは雪だるまだったの。誰が作ったのかは知らないけどね。それをちちが気に入ったから、らせつに命をくれたの」
あっさりとした答えに、むつも祐斗も言葉に詰まった。むつが雪女だろうと思っていたらせつは、やはり雪女だった。ここにきて、ようやく自ら認めたのだ。だが、雪女が雪だるまから成るというのは、初耳だった。
「…成る程。突拍子ない気がするけど、憑喪神たちは器物から産まれるし。今更驚く方がおかしいか」
らせつの言った事が、わりとすんなりと受け入れられたむつは、ふむと言っている。だが、祐斗は展開についていけないのか、それこそぽかんと口を開けている。