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10話
抱っこされるのは初めてなのか、らせつは怖がって身体を固くしていた。だが、落とされるような事はないと、むつを信用してか、楽しそうにぱたぱたと足を動かしている。
「らせつちゃん…抱っこだと歩きにくいから…肩車しない?」
「肩車?」
「そう…こうして…っと‼」
「ひゃーっ‼」
日本刀を雪に突き刺し、らせつをほんの少し投げるようにして抱き方を変えた後で、さっと首をまたがせた。
「わ、わっ…高い‼」
「あたしの方が背が高いもん当然よね。さ、これで歩きやすくなった。行くわよ」
再び日本刀を手にして、むつは来た道をずんずんと戻っていく。やや早足なのは、あまり祐斗を待たせておきたくないからと、帰れるなら早く山から抜け出したいと思っていたからだった。