639/1090
10話
下山出来ないのは、もしかしたらこの子供のせいなのではないか。むつは、そんな風に思った。だが、妖としてはまだまだ未熟そうにも思える。下山はしたいが、遊んだ所で帰れるという保証はない。しばし悩んだむつは、ふっと笑った。可能性を提示されたのなら、乗ってみるのも1つの手だ。
「…遊ぼっか。でもね、友達も一緒でいい?向こうで待ってるから」
「道に居たおにぃさん?友達なの?」
祐斗の事をすでに把握しているとなると、なかなか手強そうな子供に思えてきた。だが、祐斗の事を承知しているなら、祐斗も一緒の方がいいだろう。
「そうなの。他に道がないか、探すのに置いてきちゃったの…友達も一緒でいい?」
「いいよぉ‼」
相手は子供だ。祐斗の方が扱いも上手いだろう。そんな祐斗であれば、きっと帰り道を聞き出せるはずだろう。にっこりと笑ったむつは、日本刀を小脇に抱えると、らせつをひょいっと抱き上げた。