637/1090
10話
「………」
「…あ、あの?違ったかな?」
子供はむつの顔をまじまじと見ているだけで、何の返事もない。暗くなってきている雪山に居るのが、おかしいとでも思われているのかもしれない。だが、それを言うなれば、子供が1人で居る方がよっぽどおかしい。
「…おねぇさんは、だぁれ?」
舌ったらずで、のんびりとした喋り方は、可愛らしく子供らしい。そんな邪気のない様子に、警戒していたむつは何だか、申し訳ない気持ちとなった。
「私は…むつ、って言うの。あなたは?」
「うちはらせつ。らせつだよ」
「らせつ…ちゃん?」
なんとも物騒な名前だ。恐ろしい名前をつけられているな、と思いはしたが見た目に恐ろしさはない。