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10話
「全く…子供の悪戯みたいって思ったけど…まさか、本当に子供だなんてね」
しゃがみこんだむつは、ふふっと笑っていた。つい先程までの緊張感は、あっという間にどこかへ行ってしまったかのような、優しげな笑みを浮かべている。だが、その目の奥は決して笑ってなどいなかった。
「こんばんは。雪女…ちゃんかな?」
雪女という妖でも、何人も居るのだから名前はあるはずだろう。だが、目の前の子供の名前は、むつには分からない。それに、本当に雪女なのかも分からなかった。ただ、人ではない事だけは確かだ。
目の前の子供は、肩の所で髪を切り揃えていて、やや垂れ目が可愛らしい。だが、洋服ではなく着物を着ている。それも丈は膝下までしかない子供用ではあるが、色合いとしては男の子の物に見える。子供のうちは、見た目だけで性別が判断出来ない事もあり、むつは少し悩んでしまっていた。