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10話
祐斗を置き去りに、むつはどっしりと雪の積もる森の中に足を踏み入れた。暗くなって、気温が低くなっただけでは。むつは訳の分からない寒気に、鳥肌を立たせていた。祐斗と管狐を置いてきて、正解だった。そんな風に思っていた。
ぼすっぼすっと雪を踏みながら、ゆっくり歩いていく。心配でたまらないのか、祐斗のペンライトがこちらに向けられているのが分かる。だが、後ろからの光もあっという間に届かなくなった。踏み込んではいけない場所にまで、やってきたような気がしてむつは、すぐにでも戻りたくなっていた。
「…こんな時に颯介さんが居たらな。近くじゃなくても、事務所で社長が待ってるって分かってたら、それだけで怖くなくなるのに。ばかちんどもめ」
返事がないのは分かっていたが、行方知れずで連絡も取れない2人に対しての文句を、ぶつぶつと言っていた。そして、それだけに2人の存在がいかに大きいのか、むつは改めて感じていた。