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10話
「迷子…ではないっすよね?足跡をたどってきてますし…たぶん、これちかさんの足跡でもあると思いますし」
「迷子だよ」
溜め息混じりにむつが言うと、祐斗は驚いたように、えっと声を上げていた。驚きもするだろう。足跡をたどっていて、迷子になるはずがないのだから。
立ち止まったままのむつは、やや大きな足跡を見て、確かにちかげの物だろうと思っていた。彼は無事に、戻る事が出来たのだろうか。それとも、いつまでも下り続けているのだろうか。本人が居ない以上は、確かめようもない。
「…意外とまだ歩いてないって事も有り得るんじゃないですか?だから、迷子って決めつけなくても」
「それもそうね…もう少し歩いてみようか?」
でも、無闇に歩いて体力を消耗するのも得策ではない、とむつは思っていた。