10話
「まぁ…いいです。西原さんの事も、俺は誰にも言いませんから。それより、どうしますか?俺らもそろそろ戻りますか?」
「…もう少し待ってみよ。暗くなったとしても、ペンライトと飲み物はあるから」
西原の事には触れず、むつは鞄からペンライトを2本取り出すと、1つを祐斗に渡した。そして、昨夜コンビニで買ったペットボトルを取り出して見せた。いつの間に、入れてきたのかとむつの準備の良さに、祐斗は舌をまいていた。
「…待つって、何を待つんですか?」
「ここで、凪君が雪女と会ってたなら凪君来るかもしれない。雪女はしばらく表には出てこないかもしれないけど」
「待つにしても、時間は限られてますよ?いくら厚着してても、日が傾けば気温もかなり低くなると思いますし…」
気温が下がり、雪でも降り始めて風が出てくるようになれば、ただでさえ雪に不馴れなのだから、どうなるか分からない。祐斗はそんな不安を抱いていた。むつも祐斗が考えている事を分かったのか、少し考えてからさっと立ち上がった。
「うん…出直そうか。身動き取れなくなった時の備えはないし、ちかの話は収穫だったもんね」
切り上げ時を間違えて、危険な事になっては意味がないとむつは言った。祐斗が頷くと、むつは祐斗が一緒で良かったと微笑んでいた。