10話
ちかげの問い掛けに、むつは眉間にシワを寄せていた。だが、答えは決まっていたのか、ふっと笑って見せた。
「勿論、雪女が正常に戻るのが1番だと思ってる。後は凪君と雪女が恋路を行こうが、それぞれの道を行こうが好きにするべき。本人達の事にまで、口を挟む権利はないもの。颯介さんも気掛かりは消えるし、うちの社長も帰って来る…はず」
「と、なると…むつは雪女を追って行くのか。どうにか出来るとは思えないが」
「まぁね、何か出来ないか考えてみるよ。あたしに出来なくても…」
自分には出来ないが、誰になら出来るのか、むつは言わなかった。それよりも、と努めて明るい声を出した。
「雪女のご飯ってやっぱ男の人の精気?」
「…?言い伝えとしてはそうだな」
「ちかげでも分からない?」
「あぁ、実際に雪女をこの目で見たのは今回が初めてなんだ。雪女が食事を必要とするのか?」
「さぁ?たださ、凪君の探してる雪女…さゆきって子を探してて雪女の集団に囲まれた時に、雪女たちはうちの3人に迫ったから。やっぱし、色仕掛けで精気を奪うのかなって」
「…単に、好みの男に言い寄っただけじゃないのか?よろず屋の3人を好む女は居るだろ。そこそこ、見映えもいいんだからな」