10話
ほっとしたような祐斗の顔を見て、ちかげはそろっとむつに視線を向けた。すると、むつはふるふると細かく首を横に振っている。それを見て、ちかげは何やら納得したようだった。
「ところで、山の神の子って…?」
むつはわざとなのか、山と神という言葉の間の、のを強調するかのようにたずねた。
「雪女は季節を司る妖だ。神にも近い…雪女が居るから、冬という季節に雪が降り積もるんだ。山の神が作り出したのが、雪女だからな。それは俺たちが簡単に手出し出来る物でもない。神聖であると同時に四季のバランスもあるからな…それに、かなり手強い」
「神の作り出した妖か…確かに手出しすれば、山の神の怒りに触れるかもしれないもんね。ただじゃ済みそうにないわね…でも雪女と人間との馴れ合いはお許しになられたのかしら?」
「雪女と共に行動してた湯野の弟か?どうだろうな…それは分からない。神をもってしても止めようにも、止められない事はある」
「それもそうね。ましてや、自分の子供の事なら尚更そうなのかもしれないわね」
「あぁ…この件は難しいな。色々な物が混ざりすぎている。むつは、どうなるのがベストだと思ってるんだ?」