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10話
「…顔、いいの?祐斗居るよ?」
祐斗は明るい所で、ちかげの顔を見るのは初めてだった。しげしげと見ていても、ちかげはそれを嫌とも思っていないのかもしれない。
「構わない。俺が本気で、そう思ってると信じさせるには他に手がないからな」
「…話すの苦手だもんね」
「お前は言葉を重ねても信じないからな」
「…よくお分かりで」
「…西原の事は信じてるくせにな」
「何ておっしゃいました?」
「何でもない」
ちかげが不貞腐れたように言うと、聞こえていたはずなのに、むつはわざとらしく聞き直していた。だが、ちかげは何でもないと、ゆるゆると首を振った。本当に仲良いんだ、と2人のやり取りを見ながら祐斗は少し羨ましくも思っていた。