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10話
「まぁ冗談はさておき…確信のない話をしたくはないのよ。かといって、証拠を掴める気もしないけど」
「それでもいい。何か知ってるなら…」
「でも、敵対しなきゃならないのよ?」
むつは、敵対したくないとぼそっと呟いた。しっかりとした声で言えなかったのは、何故なのか自分でも分からなかった。少しうつ向いたむつを見て、ちかげはふっと息をつくように笑った。そして、ぐいっと口元をおおっていた布をずらした。
「…むつ、俺だってそんな事にはなりたくない。もし、何か知ってるならまだ雪女も湯野の弟も傷付けずに済むかも知れない」
くぐもった声ではなくなったと知ると、むつは驚いたように顔を上げた。自分だけならまだしも、祐斗も居て外は明るいというのに、素顔をさらけ出している。その行動には、驚き以外の何物もない。