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10話
「なぁむつ…」
「気安く呼ばないでよ。あんたも何がしたいの?わざとカメラに映ってみたりさて…目立ちたがりじゃないくせに」
「お前と違って地味だからな」
「あたしだって地味よ」
「いや…お前は目立つ。見た目も中身もな。地味に装ってるみたいではあるけど」
ばっちりメイクをしたむつを見た事のある祐斗は、うんうんと頷いていた。確かに、普段のむつはシンプルイズベストだ。メイクも薄いし、服だって落ち着いた色合いの物が多い。だが、そうしていても造形の綺麗さはやはり分かる。
「…見た目って…少し痩せたのに」
「そうじゃない。確かに…痩せたか?分からないけど、そうじゃなくて綺麗な顔立ちをしてるって事だ。中身も大人しくはないだろ?無茶するし」
さすがに一緒に住んでいただけあってか、ちかげはむつをよく分かっていると、祐斗はまたしてもうんうんと頷いていた。それを横目に、むつが舌打ちを鳴らすと祐斗は、へらっと笑って誤魔化していた。