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10話
「…対面するのは敵対するのと同じよ?」
しゃがんだちかげが何も言わずに、じっとむつを見ているからか、居心地の悪くなったむつはそう言った。ちかげが相変わらず口元を隠していて、目しか見えていない。だが、どことなく優しげな目付きをしている。
「とげとげするな。何もむつに危害を加えたいわけじゃないんだ…俺たちは雪女に何があったのか、未だに掴めていない。欠片さえ見付けられないんだ。でも、むつは何か知ってる。俺たちよりも情報網が広いんだな」
「…誉めても何も出ないわよ」
「だろうな」
がっかりしたような言い方に、誉めたらむつが調子よく言うのではないかという淡い期待があったように思えた。以外と単純な考え方をしてる人なのかもしれない、祐斗はちかげを見ながらくすっと笑っていた。