10話
尻から冷えそうとは思ったが、祐斗も立ち尽くしているのは辛い。むつの隣にぺたっと座り込むと、大きな木に寄り掛かった。
「…誰も居ませんよ?」
「………」
むっとしたように唇を尖らせたむつは、祐斗の方をゆっくりと向いた。何で、怒るのかと思ったが祐斗は何も言わない。
「雪女ってね…男の人を襲うでしょ?祐斗もほだされかけてたし。襲うってもお色気で迫って、精気を奪って糧にする。ま、食料よね。でも、凪君の探してる、さゆきって子はそうじゃなかった。あたしなんか襲っても、意味がない。そもそも襲い方はただ、殺したいだけって感じだったもん。雪女が人を襲うのは生きる為…あたしが大人しくないから、身動きとれないようにしたかったんなら話は別だけど。でもさ、雪女たちに囲まれた時…あたしは蚊帳の外だったもん。やっぱり、糧としては男なんだよ。だから、餌を取る以外の目的で人を襲うようになってる。そう見たわけ」
急に始まった話に、祐斗は唖然とした。だが、ついさっきの話の続きなのだと分かった。雪女が急に人を襲うようになったのは、性質なのか何かがあったからなのか。むつは、何かがあったんじゃないかと断言していた。その話の続きだった。