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10話
立ち止まって辺りの様子を見ていたむつだったが、ふっと何かを思ったのか、最後の力を振り絞るようにして、ぼすぼすと雪を掻き分けて歩いていく。まだ歩くのかと、文句を言いたかった祐斗だが、むつだけで行動させるわけにもいかない。したがって、後をついていくしかなかった。だが、意外と移動距離は短い。むつは大きな木の下まで行くと、背中を預けるようにして座り込んだ。
「ちょっと休憩…」
「…お尻冷えませんか?」
「立ってるのもツラいわよ。歳かな?それとも体力がなくなってきてるのかしら?」
「能力使えなくなってから…それよく言うようになりましたね。何か関係があるんですか?」
「あるかもしれないし、ないかもしれない。だって、日本刀重たいんだもん」
「………」
むつの日本刀が誰にでも振り回せる物じゃない事を知っているだけに、祐斗は頷いた。だが、重たいと思っているなら荷物持ちくらい、言いつけてくれたらいいのにと思ったりもしていた。