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はじまり
管狐に案内されるままについて行った先、大きな木の所には人影は見えない。だが、男は疑う事もなく管狐の後に続いた。そして、ぴたっと管狐が立ち止まり、男の方を見た。
「そこ、かい?」
はぁはぁと息を弾ませながら男は、走るように向かっていった。実際は雪に足をとられて、走って行く事は出来ていない。それでも急いでいるというのは、よく分かる。
男は管狐が立ち止まった所まで行くと、そっと身を屈めた。その時に傘に積もった雪が、どさっと落ちて手元が軽くなった気がした。それと同時に、何とも言えない気持ちがあった。ほっとしたような、これで役目が果たせたというやり遂げた感だったのかもしれない。
「あぁ…居た…なぎ、なぎ」
しゃがみこんだ男は、木のうろとなっている所に入り込んで、くぅくぅと寝息を立てている少年の肩を揺さぶった。
「なぎ、起きろって。そんな所で寝て…風邪ひくどころじゃなくなるぞ。なぎ」
しつこいくらいに揺さぶられ、少年はゆっくりと目を開けた。