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10話
むつは自分の踏んだ足跡をなぞるようにして、そこに足を入れてさっさと家から離れていく。振り返る事はしない。雪もむつを習うようにして、自分の踏んできた雪をもう1度踏みながら歩き出した。
とんっとんっと跨ぐようにして歩きながら、家が見えなくなる所まで来たむつは立ち止まって振り返った。誰かが出てきて、後をつけてきている様子はない。
「あの女の人…誰だろ?颯介さんには妹も居るのかしら?それともお姉さん?」
「さぁ?俺は見てませんけど…」
きつい眼差しの女を思い出したむつは、いけ好かないと言っていた。自分もそこそこ目付きは、鋭いというのにそこには触れないのだろう。祐斗は、むつの目付きも鋭いと言うと、むつはくっと笑った。きついのと鋭いのは違う。そんな風に言って、くすくすと笑っていた。