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10話
「いよっいしょっと…」
足を持ち上げて、ぼすぼすっと雪を踏み締めて、むつは管狐を追っていく。管狐は雪に不馴れなむつと祐斗を気にしているのか、ゆっくりと進んでくれている。
「…ここは、いい所ね」
染々とした様子でむつが呟くと、管狐はくるっと振り返った。むつはそんな管狐の様子に気付いていないかのように、辺りを見回している。小道にそれただけで、民家は皆無となり左右にあるのは、どっしりと雪を積もらせた木々ばかりだ。そのせいで日光が届かずに暗い。それでも、むつはいい所だと思っているようだった。日光の届く明るい場所ばかりが、いい場所ではない事を知っている祐斗もつられたように、辺りを見回していた。
「昔からの物が残ってる土地なのね。だから、この辺を厭う人も居るってわけか…あたしは好きだけどな」
ね?と同意を求めるように管狐を見ると、管狐は首を傾げるだけだった。言葉が分からないのではなく、むつの言っている意味が分からないのかもしれなかった。