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10話
「む、むつさん…?」
「何か楽しいかも」
へらっと笑ったむつは、祐斗の手を借りて起き上がって、ぱたぱたと雪をはらった。普段であれば、顔面から倒れたら痛いのに全然痛くない。むつはそう言って、屈託なく笑っている。その暢気加減に、祐斗は苦笑いを浮かべたが楽しいなら、まぁいいかと祐斗もいささか暢気だった。
「で、何ですか?何を言いかけたんですか?」
「あ、うん…管狐がこの辺で生活できるのって、雪に埋もれないからだろうなって。それに…変なのは居なさそう。安全な場所なんだろうね」
変なのが居なさそうと言うむつの言葉を聞き、祐斗は首を傾げた。まだ広い道から、少し小脇に入ったばかりだというのに分かるのだろうか。祐斗はそんな風に思っていた。