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10話
むつと祐斗を振り返りつつ、管狐は細い小道に入っていく。こちらは車道でもないのか、しっかりと雪が積もっている。
「…長靴持ってきたら良かったですよね」
「かっちょ悪いけどね」
管狐は雪に埋もれるほどの重みもないという事なのか、表面をするすると進んでいく。まるでスキー板を身に付けているかのような、滑らかな進み具合だった。
「管狐が雪深い土地に根付いていられるのは…足が、あぁっ‼」
「わっ‼むつさんっ‼」
ずぼっと膝上まで雪に埋まりながら歩くむつは、爪先がひっかかったのか、ぼすんっと顔面から倒れた。咄嗟に伸ばした祐斗の腕は、虚しく宙を掴んだだけだった。
雪が深いからか顔面から倒れても痛くはない。のそのそと起き上がったむつは、ぶるぶると頭を振った。冷たい事は冷たいが、全然嫌だとは思わなかった。それどろか、何が面白いのか笑みを浮かべている。