586/1090
10話
「本当にもう…とにかく、最近は皆勝手すぎるんですよ。落ち着いたら、呑みに行って、あらいざらい隠し事を話して貰わないと気が済みません」
「祐斗は隠し事ないの?」
「隠そうとしても、すーぐ気付いちゃうじゃないですか‼俺だって隠したい事くらいあるんですからね」
ぷりぷりと怒りだした祐斗に、むつはきょとんっとした顔をした。祐斗がこんな風に怒るのは珍しい。それほどまでに鬱憤が溜まっているのか、それとも少しずつ仕事をこなして自分に自信を持てるようになったのか。むつには、両方のように感じた。そうなると、祐斗が少し頼もしく思えた。
「もー…だって、祐斗ってば素直なんだもん。ごめん、ごめん。終わったら、そうね。皆で久しぶりに呑まないとね」
そう言って笑ったむつは、祐斗の手をきゅっと握った。突然の事に驚いた祐斗だが、それを嫌だと思わなかった。
「祐斗の気持ちも聞けたし…行こっか?でも、そうね…うちって皆少しずつ特殊だから、気持ちとか思ってる事が言えない時って多いのかもね」
「遠慮なのか信用されてないのか分からないですけどね…」