10話
祐斗が重ねて、もう一度謝るとむつは、ゆるゆると首を振った。颯介と山上に隠し事をされて、心配になり腹が立つのは、むつも同じだ。それを祐斗は、むつの事も加えて、腹が立っているという事だ。今は祐斗が1番、よろず屋の面々に対して腹立たしさを感じているのだ。
「ごめんね。一緒に居たいから言えない事もあるの…先輩とはさ、関係がまた違うから。それに…卑怯だけど、試したのよ。これを言って、距離を取るような人なら、一緒に居ない方がいいって思うしね」
言い訳でしかないが、むつが溜め息混じりに言うと、祐斗は横からむつの顔をのぞいた。何かしら、吹っ切れた物があるような、すっきりとした目をしている。むつの中で、何かが変わってきている。祐斗はそんな風に思えた。
「…言ってくださいよ。今更、付き合い方変える方が難しいんですよ?俺、結構むつさんの事…」
さらさらと言葉が出てきていた祐斗だったが、はっとしたように口をつぐんだ。言った所で、おかしい言葉ではないというのに、何故か言うのを躊躇った。祐斗は何故だろうと、不思議な心地になったが、脳裏にはここには居ない、菜々の顔がちらっとよぎっていた。