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10話
「それと、急に居なくなった事が関係してるなら教えてくださいよ」
「確証はないし…社長が言わない以上は言えないよ。言いたくない事かもしれないもん」
「…むつさんもまだ、俺らに言いたくない事ってありますか?」
ちょこちょこと歩く管狐を追っていたむつは、ぴたっと足を止めた。それをつられるように、祐斗も足を止めている。
「泊まった時に…聞いちゃいました。社長と盗み聞きしてて…その…西原さんと風呂場の会話」
「…どの会話かしら?」
「…人じゃないかもっていうのを」
立ち止まったままのむつは、じっと足元を見ていた。聞かれていないかと、確かめた時に、祐斗に嘘をつかれたという事だ。むつは少し考えてから、ゆっくりと顔をあげた。
「それもまだ確証はないのよ…ただ、そんなふしがあるっていう事でさ。本当にそうだったら、あたしは何だろうね?それこそ、ちか達に殺される側だわ」
「…すみません、こんな時に。でも、むつさんもですけど湯野さんも社長も実は隠し事多くって…ちょっと腹立ったりもするんですよ。一緒に居るのに信用されてないのか、って」