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10話
「でも、してないと余計に感覚なくなりそうですから…しといてくださいよ?」
「分かってるわよ。祐斗も手袋…してるか。さてと、そろそろ管狐にお願いしようか」
むつは自分の胸元を見ながら、おいでと声をかけている。すると、押し込まれた管狐がマフラーの隙間から顔を出した。まるで、本当にむつが管狐持ちのようになっているかのように見える。無理に凪に返さなくても、むつと共に居た方が幸せなのではないか。祐斗はそんな事を思ったが、管狐の気持ちが分からない以上は口には出さなかった。
「お家まで案内お願い出来る?」
ひょっこりと顔を出している管狐に言うと、するっと出てきてとんっと地面に向かって飛び降りた。寒さなど、物ともしないかのようだった。
「…行こう」
にわかにむつの表情が険しくなった。何かあるのかと、祐斗も気を引き締めたがむつは何があるとは言わない。ただ、管狐を促しただけだった。