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9話
終点に着く頃には、疲れきったむつは、人気のなくなったホームのベンチにぐったりと座り込んでいる。すぐに立ち上がれそうにないのは、祐斗も同じだ。
「…人酔いなのか乗り物酔いなのか」
「むつさんの場合は両方っすね」
自分は人酔いしたのだと、祐斗が笑うとむつは深々と頷いた。2人して、ぐったりと座っていると、冷たい風がびゅうびゅうと吹いて、あっという間に体温を奪っていく。だか、気分が悪くなっている今は寒いくらいが、ちょうどいい。
「この後は管狐に活躍して貰って、颯介さんの実家の場所を確かめるわよ」
「りょーかいっす」
気だるげに祐斗が手を上げて返事をすると、呼ばれた管狐がするっと顔を見せた。
「…頼むわよ。管狐、ここまで来たら今度は、あんただけが頼りなんだからね」
むつがそっと撫でてやると、管狐はむつの手のひらに顔を押しつけるようにしてすり寄っていた。