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9話
朝の早い時間で、かなり込み合っている電車に揺られ、むつと祐斗は目的としている駅に向かっていた。
「…むつさん、どこまで乗るんすか?」
「終点」
「本当に、あのホテルが1番の最寄りだったんですか?だって終点までって…」
「40分くらい乗るわね。でも他にホテルなかったのよ?結構、1つの市がデカいってか広すぎるのよ」
「…こんな広い所で本当に湯野さん見付けられるんすか?不安なんですけど」
「なるように、なる」
うん、と頷いたむつだったが、どことなく不安そうでもあった。ぎゅうぎゅうの満員電車は、通勤で慣れているとは言えど、1つずつの駅が近いから人の乗り降りも多くて、常に満員というわけでもない。それがこうも駅と駅の距離が離れていると、人の乗り降りもほとんどなく常にぎゅうぎゅうだった。