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9話
支度が整うと、むつと祐斗は揃って部屋を出た。もう1泊する事を伝えようと、フロントで声をかけてみたがやはり人は出てこない。昨日チェックインをしてからというもの、人を見ていないし、人の気配を感じる事もない。さすがに、むつもイライラするのか、舌打ちを鳴らしていた。
「仕事しろっつーの」
「…まぁまぁ」
祐斗になだめられながら外に出たむつは、うわっと声をあげていた。霙のようだった雪は止んでいたが、その代わりに道はぐじゃぐじゃと泥混じりの雪で汚くなっている。雪国の冬が綺麗だと思っていたむつは、いささかがっかりしていたようだった。だが、これなら電車も停まるような心配は無さそうだ。
「…社長もだけど、ちか達も近くに居ると思うんだ。祐斗も注意しといてね」
「分かりました。でも…」
「うん?」
「社長もっすけど、ちかさんたちも人じゃないですか。俺が分かるのは、霊だけなんで…」
「…それもそうね」
何か言いたそうだったむつだが、それは口には出さずに頷くだけだった。