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9話
風呂場のドアは1度閉まったが、すぐに開けられ、ぽんっと管狐が床に下ろされて、再び閉まった。追い出された管狐は、しょんぼりとしたのかするするとベッドに上った。
「よしよし…お前、やっぱり寂しいんだな?凪君に置いてかれて、むつさんに追い出されて」
話し掛けながら、むつが撫でてやると管狐はぷいっと顔を背けた。寂しがりで、素直じゃないのは、誰かにそっくりだなと祐斗は思った。その誰かは、祐斗が何を思っているのかは知らずに、シャワーを浴びているのだろう。風呂場から、ばしゃばしゃと水音が聞こえてきていた。
シャワーだけで済ませたのか、むつは備え付けのバスタオルで髪の毛を包んで、すぐに出てきた。包みきれていない髪の毛からは、ぽたぽたと水滴が落ちている。
「…ドライヤー壊れてる」
「最悪じゃないっすか!?」
最悪だと呟きながら、むつはがしがしと髪の毛を拭き始めていた。