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9話
「むつさん?」
「…とりあえずホテルに戻ろ。雪もだいぶ降ってきてるし、寒いからね」
相変わらず、水分の多そうな雪がぼたぼたと落ちてきている。祐斗が傘を差すと、雨のような音がしていた。積もりはしないのかもしれないが、霙のような雪は滑りやすそうだった。
駅前のコンビニで飲み物と明日の朝用にと、パンなんかを買い込み靴をびしゃびしゃにしながらホテルに戻ってきたむつと祐斗は、薄暗いロビーを通って部屋に入った。こんな雪が降ったりすれば、1階の絨毯がじっとりと湿っていても当然かとむつは納得していた。
「靴の代え…必要だったかも」
鞄を置いて、靴を脱いだむつはぼすんっとベッドに座った。祐斗も靴と靴下を脱いで、暖房のスイッチをつけるとコンビニの袋から飲み物を出してむつに渡した。