9話
頼んだ物を綺麗に平らげたむつと祐斗は、出ようと立ち上がった。いつの間にか、店内にはむつと祐斗の2人だけとなっていた。
「ご馳走さまでした」
勘定を済ませたむつが言って出ようとすると、中年の店員は2人を引き留めた。
「…あんたら、雪女に興味を持ってるみたいだけど探したりしないだろうね?」
「探しますよ。それが目的ですから」
当然だと言いたげにむつが言うと、中年の店員は咎めるかのように、目を細めた。だが、むつは気にしている様子はない。
「お兄さんは何か知ってるみたいですね」
「…その雪女の居る村の出だからな」
「それなら、何か知ってる事があれば…」
「教えない。というよりも、あの村の出のやつは、雪女については何も言わない。悪い物じゃないにしても、関わりたくない。あんたらも関わらない方がいい…って、昨日もそんな事を言ったっけな」
「誰にですか?」
「名前は知らない。胡散臭い男だったな」
「…そうですか。まぁ私たちは大丈夫ですよ、ただの興味で動いてるわけでもありませんから。ご忠告は感謝します。ありがとうございました」
中年の店員は、まだ何か言いたそうにしていたが、むつは祐斗の背中を押して外に出させると、さっさと店を出てぴしゃりと戸を閉めた。