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9話
魚料理がおすすめなようで、1人前の鍋とお造りの盛り合わせなんかを頼み、それらを摘まみながら、むつはくいっとビールを飲み干した。頬杖をついて、どこを見ているのかさえ分からないような目をしている。もう酔いが回ってきているのかと、祐斗は心配になってきていた。
まだ早い時間だからか、店内には人は少ない。常連客らしき年配の男たちが、カウンターで中年の店員と、雑談に興じている。
「むつさん…?」
頬杖をついたまま、とぷとぷとグラスにビールを足しているむつは、ちらっと視線を祐斗に向けた。
「呑みすぎてませんか?」
「大丈夫…」
そう言ったむつは、空になった瓶を持ち上げて、店員にもう1本くださーいと言っている。店員がすぐに瓶ビールを持ってきて置くと、むつは礼を言って祐斗のグラスにもビールを足した。