561/1090
9話
ホテルの近くで手頃な飲食物を探してみたが、地元の飲食物といった所ばかりだった。この辺は、観光客が来るような所ではないという事だろう。少し残念そうなむつではあったが、こじんまりとした居酒屋を見付けると、そこに入ろうと言った。もう歩き回るのも、疲れているのかもしれなかった。
席数も少ないし、客もそんなに多くはない。古びた雰囲気はあるが、ホテルとは違って清潔感もあるし明るい。
「…飛び込みだけど失敗じゃない気がする」
暖かいおしぼりで手を暖めたむつは、瓶ビールを頼んだ。のんびり呑んでていいのかと、祐斗は思ったがむつは何も気にしている感じはない。
「まぁメニューはどこにでもありそうなのばっかりで…仕方ないか」
「…観光気分になってませんか?」
「ご飯くらい…いいじゃん」
「食欲が戻ってるって事ですね」
にこにこする祐斗は、メニューを見ながらどれにしようかと早速悩んでるようだった。