55/1090
2話
「………」
山上のコントロールは凄まじく、むつが逃げようともしっかりと当ててくる。足元には雪が積もっていて、動き回っていると、すぐに疲れるし息もあがる。
ぜぇぜぇと息をつくむつと、ほとんど動いていないから余裕な山上。祐斗は雪玉で濡れて冷えるもの嫌だからか、完全に傍観者として立っている。だが、あっちこっち逃げ惑っているむつは、だんだんと近付いてきている。山上の雪玉をくらいたくない祐斗は、さらに離れようとしたが、息を切らせてやってきたむつにがっしりと腕を掴まれた。そして、むつは祐斗の背中に隠れた。
「ちょ‼む、むつさん‼」
盾にしないで欲しいと思ったがすでに遅い。山上の投げた雪玉が、ぼすっと顔に当たった。
「祐斗もむつもどんくさいな」
勝ち誇ったように、からからと山上が笑うと、祐斗はむすっとしながら顔の雪を払った。




