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9話
室内に足を踏み入れたむつは、あらと呟いた。その意外そうで、少し嬉しそうな声に、祐斗は大丈夫なのだろうと、むつに続いて部屋に入った。
「…思ってたより普通ね」
「ですね」
想像していたよりも室内は、清潔だった。絨毯が、じっとりと湿っている感じはないし、ベッドの白いシーツは糊がきいていて、ぴしっとしている。上着も脱がず、風呂場とトイレのドアを開けて中を見て、ちゃんとお湯が出るか水は流れるかを確認したむつは、うんうんと頷いていた。祐斗は、クローゼットを開けて中を見て、壁にかかっている絵を持ち上げて裏を見たりしていた。
「大丈夫そうっすよ」
「水回りも大丈夫」
「ただ…」
「ベッドがダブルで1つなのが想定外だわ」
テーブルと椅子が二脚、テレビに小さな冷蔵庫とあるが、でんっと置かれたベッドは、ダブルサイズで1つしかなかった。