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9話
「もうむつさんの管狐みたいになってますね」
「うん。このまんま、貰っちゃおっかな?居てくれると胸元暖かいんだよ」
くすくすと笑ったむつは、手袋をはめた。コートに合わせてなのか、手首の所には、ファーのぼんぼんがついている。どう見ても、観光に来ているような服装だが、コートの下がスーツなのを祐斗は知っていた。それに、しっかりと日本刀も持ってきているのも。ただ、いつものように布を巻いてあるだけではなく、竹刀をいれる袋に入れてあった。ちぐはぐな感じではあるが、仕方ないなと思うだけだった。
「そうですか…降りだしそうですし、早くホテル行きましょうか。もうチェックイン出来る時間ですし」
「うん…」
鞄を持ったむつは、きゅっきゅっと雪を踏み締めて、駅員の立っている改札を抜けた。