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9話
在来線も乗り換えて、ようやく目的地に着いた頃には空は暗くなってきていた。2月になり、日が落ちるのが遅くなっているというのに、とむつは空を見上げた。日が傾いて暗くなっているのではなく、分厚い雲に覆われてきているから暗くなってきているのだと気付いた。
「雪雲かしら?」
「…かもしれませんね。こっちだと、そのせいなのか、ただの気候なのか区別がつかなくなりそうですね」
祐斗の言う、そのせいというのは雪女の事だ。むつもそれを分かっているから、眉間にシワを寄せて頷いた。
「でも、こっちでの雪ってさ…」
「そのせいって事でしょうか?」
「たぶんね。だって出身地だもん…管狐。ごめんね…窮屈な思いさせてるけど…明日まで我慢しててね」
電車を降りホームのベンチに鞄を置いたむつは、マフラーを巻きながら胸元を、優しく叩いた。すると、ひょこっと顔を出した管狐が、むつと祐斗を見てまた大人しく服の中に戻っていった。