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2話
山上がすくいあげて投げた雪の塊は、べしゃっとむつの顔面に当たった。固くはないから、痛みはなかった。だが、顔も髪の毛も、汚したくないコートまで雪まみれとなった。
まさか、顔面で受け止めるとは思いもしなかった山上は、やばいと焦ったような顔をしている。祐斗はむつの髪の毛についた雪を、慌ててぱたぱたと落としていた。
「…社長のばかっ‼」
むつは足元で雪をすくいあげて、ぎゅっと握って固くするとそれを山上に向けて投げつけた。びゅんっと飛んできた雪玉だったが、避けるまでもなく山上にはかすりもしない。ノーコンすぎる自分に腹が立ったのか、むつはすぐに雪をすくいあげてまた山上に向かって投げた。
子供じゃないんだから、遊ばないと言っていたにも関わらずむきになっているむつと、それを見て笑っている山上を見ながら、祐斗はにこにことしていた。
「わっ‼」
またしても顔面で雪に受け止めたむつは、ぶるぶると顔を振りながら悔しそうに山上を見た。山上にはまだ1発も当てていない。




