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9話
見渡す限り銀世界。山上が見ているのは、そんな表現が似合う景色だった。普段であれば、見れるような景色ではない。感動してもいい物だが、山上はそんな事を思ったりはしなかった。何で、来てしまったのだろうか。そんな後悔さえ感じる心持ちだった。
ふるふると頭を振った山上は、いつまでも立ち尽くしているわけにもいかないと、ふらっと歩き出した。
雪を踏むと、きゅっきゅっと鳴る。また昨日にでも降ったのかもしれない。全くといっていいほどに、足跡もタイヤの跡もなかった。そんな中を、山上は行く場所が決まっているかのように、しっかりとした足取りで歩いていった。
少し歩いていくと、屋根にどっしりと雪を乗せた駅が見えてきた。駅舎に入り、路線図を眺めていた山上は、ふむと頷くと小銭を券売機に入れて切符を買った。電車が来るまでにはまだ時間がありそうだからか、近くのベンチにどっかりと座り、考え事をするかのように天井を見ていた。