9話
むつが半分ほどは食べた弁当の残りを、胃にしっかりとおさめた祐斗は、ふうと息をついていた。朝から、こんなにしっかり食べたのは、いつぶりだろうかと思った。だが、食べておかないと、体力だってもたないかもしれない。それに今回は、颯介も山上も居らず、むつと2人きりなのだ。男の自分が頑張らねばいけない。そんな気持ちもあった。だが、目的地に着いてからどうしたらいいのかというのは、祐斗には思い付いていない。やはり、西原の言う通り力を合わせてやっていかなくてはならない。そもそも、自分1人で何か出来るとも思ってはいなかった。
「それで、むつさん…着いてからはどうするんですか?」
「とりあえず、そうね。管狐に案内して貰おっか。そうすれば、颯介さんの実家くらい分かるはずだし」
「湯野さん…嫌がりませんかね?俺たち、何も聞かされてませんよ?湯野さんの事って」
「訪ねて行ったりしないわよ…たぶん。とりあえず、家の場所は把握しておきたい。凪君、身体弱いらしいから…幼馴染みの雪女と出会ったのも家の近くじゃないかしら?」
「実家を中心に捜索ですか?先ずは湯野さんからって事で…いいんですか?社長は?」
「社長も案外、颯介さんを探してるんじゃないかしら…?だとしたら、きっと会えるよ。颯介さんも社長も、無理矢理にでも連れて帰る。それが、あたしと祐斗の仕事だからね」
「了解っす」