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2話
「あった、あった。ほれ、行くぞ」
ぽんっと投げ渡されたのは軍手で、むつと祐斗は顔を見合わせた。山上が何をするつもりでいるのか、分からないのかもしれない。
暖房も電気もつけっぱなしだが、鍵だけは閉めていくようで、誰も入る事はないだろうけど、と山上は笑いながら鍵をかけた。寒い寒いと言いながらも、楽しそうな山上についていき、むつと祐斗はビルから出た。
「わ、まだ降ってる」
「だいぶ、降ってますよね。足跡何にもないですよ。それに人通りも皆無」
「だから、いいんじゃねぇか。ほれ」
「………?」
「何をきょとんっとしてんだ、遊べ」
「え?」
「だから、遊べって。子供はなぁ雪降ったらはしゃいで外で遊ぶもんなんだ」
「こ、子供って…あたしも祐斗も二十歳越えてますけどー?」
「二十歳越えてようが何だろうが、俺からしたら子供だ。ほれ、むつ」




